建築士コラム シックハウス問題は誰が解決するのか

住生活環境研究所 一級建築士 福田啓次

シックハウス症候群は、直接的には揮発した化学物質で室内環境が汚染されることによる疾患です。しかし、こんな室内環境をつくりだしたのはどうしてか!、誰なのか!。
ここ30年ほど前からの「住まいのつくり方」や生活全般にわたる急速で複合的な変化に、私達の「くらし方」との間に大きなギャップが生れました。私達は、このギャップに気が付かないままに「人の意識も身体」もついていけず、そのことで「ひずみ」が現れ、これが原因の疾患ではないかと私はとらえています。
シックハウスを解決するには、この「ひずみ」の解きほぐしが必要です。

(画:群青久美)
建築界では、20年ほど前にシックハウスが社会問題化し、2003年7月より建築基準法により「ホルムアルデヒド」が規制されると、シックハウスは、もう解決したかのような気分になり、建築現場ではほぼ語られなくなりました。
ところが、シックハウスによる被害は少なくなったといえ続いています。
新築やリフォーム後、体調不良などの被害に合い、室内空気の化学物質を測定分析しても、法律が規定している濃度を超えることはまれです。
室内で何かが臭い気分がすぐれないのに、施工者からは「基準値以下です」といわれ責任をとらず解決の手だてがないなど、被害のあり方がより深刻になってきています。
原因となっている化学物質は法律が規定しているモノでなく、ほかのモノなのです。

さらに、手軽で便利な暮しを求め、殺虫剤、防虫剤、合成洗剤、除菌剤、芳香剤、消臭剤など、じつにさまざまな化学物質を含む生活用品が住いの中で使われています。
最近では「香りはエチケット」とばかりに、香料入り柔軟剤・洗剤、香料入りシャンプーや髪スタイリング剤なども多く使われています。
気をつけて下さい。これらは生活者自らがシックハウス症候群の原因を作り出しています。化学物質が低濃度でも、そこで長時間生活し室内空気を吸い続けると、体内に蓄積していくといわれています。
今は健康であっても、蓄積量がその人が持つ許容量を超えると発症する可能性があるのです。

シックハウス症候群対策の基本は「予防原則」です。
その原因と思われる行為や物質との因果関係を科学的に証明できない場合でも、予防的に規制していく考え方です。
シックハウス問題は、住まいをつくる側と住む側の意識が変わらなければ解決しません。
建築界が経済効率優先の建築スタイルから「健康に暮せる」建築スタイルに見直すこと。
生活者も、生活スタイルはこのままで良いかを、そろそろ見直す時ではないでしょうか。
便利で お手軽な生活も ほとほどに!
健康に暮らせる 住まい を考えて!
「住まい」は生活の基盤である。

写真は福田啓次氏

≪プロフィール≫
・1978年(昭和53年)
「福田設計事務所」として主に住宅設計の事務所を開設。
・2001年(平成13年)
設計業務と合わせて、生活者の「住生活環境の改善支援」の為にプロデュース・コンサル業務を事業内容に加え「住生活環境研究所」と事務所名称を変更。
・2016年(平成28年)
事務所を金山駅近くに移転
≪受賞≫
・愛知県 人にやさしい街づくり賞(第11回) 「ディサービス碧」
≪著書≫
・「家族と健康にやさしい住まい」   田中恒子 共著        かもがわ出版
・「アレルギーの快適生活術」     アレルギーネットワーク共著  風媒社
・「社会派建築宣言」         新建築家技術者集団 共著   東洋書店
≪建築活動≫
・新建築家技術者集団 愛知支部   代表幹事
・すまい・アレルギーネットワーク  事務局長
・あいちの木で家をつくる会     幹事
・大曽根居住研究会         事務局長
・愛知建築士会 研修委員会技術部会 部会長

春日井環境アレルギー対策センター
〒486-0812 愛知県春日井市大泉寺町121-2
TEL:
【SDGsの取組】